3年の研究期間の最終年度に当たる平成21年度は、研究項目のうち、「現地・関係国の官民連携支援」、「結論の整理・統合」および「各ステークホルダーへの提言」に関する調査検討を、以下の通り実施した。 1. 現地・関係国の官民連携支援 官民連携支援の研究対象とするタイの自動車産業人材育成プロジェクト(AHRDP)に関して、各ステークホルダーの組織や取り組みが全体として過不足なく分担されているかの分析に重点を置いた。具体的には、タイ側官民ステークホルダーのオーナーシップをさらに高めることの必要性が明らかになった。この過程で、日本マレーシア自動車産業協力事業(MAJAICO)との比較検討も行っている。 2. 結論の整理・統合 本年度の研究に加えて、平成19年度、20年度に実施した「分析枠組みの精緻化」、「「摺り合わせ」人材育成の必要性と妥当性」および「職種・職階別人材育成および企業内分業体制」に関する理論・実証研究の結果を踏まえて、結論の整理・統合を行った。AHRDPの参加企業にとって「摺り合わせ」人材育成は必要かつ妥当であり、実現可能な企業内分業体制は企業によって異なることを示した。例えばQCD改善なら日本で現場監督者層の仕事となる内容まで技術者が担当するケース、あるいは現地スタッフで対応できず日本人専門家を雇用し短期的には全面的に依存するケースも少なくなかった。各種能力の中では、とくに進化能力を持つ人材の育成が難しいことが分かった。 3. 各ステークホルダーへの提言 日系企業の果たしうる役割が大きく、民間企業としての限界はある中で、他のステークホルダーとの協力および全体の整合性を勘案し、連携への参画できる体制を整備することが重要であることを提言としてまとめた。 以上の成果を、国内関係者、現地協力者との研究打ち合わせを通じて検討したうえで、最終報告書として取りまとめた。
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