研究概要 |
本年度は、以下の4つの研究を行った。第1に、卸電力の現物価格の理論モデルを発展させ、電力価格が特別に高くなるレジームと通常のレベルにあるレジームを行き来する確率がどのような性質をを持つべきか、理論的に分析した。("On Transition Probabilities of Regime Switchingin Electricity Prices, 2008," Energy Economics 30, 1158-1172 (Co-authored with Takashi Kanamura)) また、夏日の数でペイオフが定まる気温デリバティブの価格評価を行った。 第2に、株価の順位を用いて、ストカスティック・コリドーを定義し、これと固定レベルのコリドーをスワップするエキゾチックオプションを定義し、そのプライシングのための数学計算を行った。さらに順位の特性を生かすために、将来時点から期間を開始させるフォワードスタートのストカスティック・コリドーを定義し、これもフォワードスタートの固定レベルコリドーとスワップさせるエキゾチックオプションを定義し、数学的計算が可能であることを示した。 第3に、保険会社や年金基金など、長期の負債を持つ投資主体の行動についての理論研究を進めた。特に負債構造と運用収益の配分方法の関係に着目し、資産全体の運用方針への影響を分析している。その結果、実務上よく用いられている資産運用方針であるconstant asset mix戦略の問題点が明らかにした。さらに、この問題に対処するための方法を分析中である。 第4に、株価に大きな影響を与える経営者の業績予想とアナリスト予想に関する分析を行った。その結果、経営者は、アナリスト予想を上回る業績を達成するために期待マネジメントを行い、経営者予想が公表されると、直ちにアナリスト予想も修正されることを明らかにした。
|