研究概要 |
本年度は,エネルギー商品,ヘッジファンド,年金運用,企業価値評価に関し以下の成果を得た。 まず大橋は,電力需要変動リスクと密接な関係にある天候デリバティブのプライシングについての研究を行い, Energy Economicsに掲載予定となった。また,電力会社の利潤最大化行動を通じて成立するであろう,電力価格,燃料価格と排出権価格間の関係を明らかにした。さらに,長期的な均衡関係である共和分関係を明示的に導入した商品デリバティブのプライシングモデルを開発した。 三浦は, 380のヘッジファンドに関するデータを分析し,半数近くの180ヘッジファンドについて,月次リターンデータに自己回帰構造が見られることを発見した。この自己回帰構造が平均分散アプローチによるパフォーマンス分析結果にどのような影響を与えるかを詳しく調べた結果,マネージドフューチャー,コンバーティブルアービトラージュなどのカテゴリーにおいて,リスク・リターンの大小,オプション特性,シャープ測度などの計測結果に対する顕著な影響を見出した。 本多は,保険会社や年金基金などのように,長期の負債を持つ投資主体の行動についての理論研究を進め,研究成果を論文として作成を進めた。また,負債を持つ場合の経済主体の分析を行い,企業における資本構成の決定と株式価格の関係を分析し,研究発表を行った。 最後に野間は,経営者予想とアナリスト予想の関連について実証分析を行った。「経営者予想とアナリスト予想-期待マネジメントとハーディング」では,(1)経営者は事前のアナリスト予想を僅かに上回る利益予想を公表する傾向があること,(2)経営者予想が公表されると,直ちにアナリスト予想も修正されること,の2点を明らかにした。「業績予想とモメンタム」では,期初の経営者予想が業績モメンタムを十分に反映していないことを解明した。
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