帝国データバンクが提供する未公開および公開企業約16000社に関する、1993年から2005年までのパネルデータを用いて、わが国銀行の未公開企業に対する融資行動の決定要因を分析するためのデータ整備および予備的考察を実施した。American Economic Review誌の2005年に掲載されたPeek and Rosengrenの論文では、わが国の公開企業のみのデータを用いて、銀行はバランスシートにおける損失の顕在化を避けるために、財務状況の悪い企業に対して追加的な融資を実施しており、資金配分のゆがみが生じていることを実証的に明らかにした。今回実施しているわれわれの研究は、Peek and Rosengrenの研究を未公開企業にまで拡大して実施するものである。わが国銀行の融資残高の約7割を中小企業が占めていることを考えれば、未公開企業を含めた分析が不可欠である。金融機関からの借入が前年から増加したかどうかというダミー変数を被説明変数とするプロビットモデル(ランダムエフェクト)を推定する。説明変数には、融資先企業の属性や財務状況、銀行の属性や財務および株価状況を組み込んで分析を行い、融資の増加がどのような特徴を持つ企業に対して生じているのか、また、どのような特徴を持つ銀行において生じているのかを明らかにする。さらに、融資先企業の上位5つの株主リストのデータをもとに、社長・役員・親族等の個人によって上位株主が占められている企業、ベンチャーキャピタルが投資している企業、銀行が投資している企業などのタイプ分けを行い、企業の所有構造と銀行の融資行動の関連性についても今後分析を行う準備を進めている。
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