公開企業(大企業)についてはNikkei Needs Financial Questのデータ、未公開企業(資本金8000万円以上の中小中堅企業)については帝国データバンクのデータを用いて、1993-2005年のパネルデータを作成した。この中には企業属性に関わるデータと財務データの両者が含まれており、銀行が公開企業と未公開企業に対してどのように異なる対応をとっているかを分析することが可能となる。American Economic Reviewに掲載されたPeek and Rosengren (2005)では、対象を公開企業に限定した分析ではあるが、財務状況の悪い不健全な企業(ゾンビ企業)に対して、財務状況の弱い銀行が追加的に資金を提供しているとする、「Evergreening(追い貸し)」現象がみられることを明らかにした。われわれの研究では、公開企業のみならず、未公開企業のデータを含めて、両者の企業への融資行動の違いを分析したところ、公開企業に対しては財務状況の悪い企業に対する追い貸し現象(不自然な淘汰)が同様にみられたが、未公開企業に対しては、健全な企業に対して融資が増加するという、公開企業とは異なる現象(自然な淘汰)がみられた。さらに、1993-2005年を1997年の金融危機前、金融危機直後の1998-99年、金融危機後の2000-05年の3つの期間に分けて分析したが、金融機関が置かれている状況によっても融資行動に違いがあることを明らかにすることができた。さらに、こうした研究を基礎にして、データの制約上、公開企業のみの分析となるが、メインバンクや融資額上位行の融資額のシェアや株式保有が融資行動にどのような影響を与えているかを分析した。
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