2010年7月にフランスのマルセイユで開かれた世界ビルマ研究者集会で本研究について報告した。このような土地・借金文書を使用した研究はまだ全くなされておらず、早く全体像をまとめた報告書を執筆するように激励された。 しかし、科研費で購入した文書の整理はまだ終わっていないのが現状である。今年度は、前年度で分類を修正した、ビルマ語でアパウン(apaung)と呼ばれる借金の形態、すなわち土地の質入について、「レッメー(letme)」(Non-usufructuary mortgageと、「レッシ(letshi」Usufructuary mortgageの区別に沿って再分類し、さらにスキャン数とデータ項目数を増加した。その結果、701部(「枚」ではないのは、文書が数枚で1セットになっていることがあるため)の質入に関する文書をスキャンし、英語でエクセルのデータベースを作成した。その結果、ファーニバルがmortgage tenancyと名づけた小作形態は、この文書群では「レッシ(letshi」と呼ばれるものであり、そうではない、相対的に近代的な抵当権を設定するだけの「レッメー(letme)」とういう形態での借金の仕方もかなりあったことが判明してきた。この2形態の分かれ目の要因はどこにあるのか、貸し手側にあるのか、借り手側にあるのか、現在分析中である。 これらの質および抵当に関する文書の解析の前に終了すべきであった、小作に関する文書の整理と成果の公表についてであるが、多くの雑多な文書の中から、これらを探すのに非常に時間がかかり、さらには、今まで見つけることができなかった上ミャンマーのミンジャン県の文書を今年になって発見することができ、これもデータベースに付け加えるという作業を行なったので、整理と公表は後回しになってしまった。小作については現在325部のスキャンとデータベース化が終わっている。
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