研究分担者 |
小林 准士 島根大学, 法文学部, 准教授 (80294354)
相良 英輔 広島経済大学, 経済学部, 教授 (70124071)
山崎 亮 島根大学, 法文学部, 教授 (40191275)
伊藤 康宏 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (40201933)
鳥谷 智文 松江工業高等専門学校, 人文科学科, 准教授 (10280439)
|
研究概要 |
島根大学所蔵の石見銀山領の村々(文久3-4年,69村ほか)の宗門改帳などの画像ファイルおよび文字データファイルの作成をさらに進め,これらを用いて人口変動メカニズムを明らかにする研究とともに,その背景となる経済・政治・文化の変化を明らかにする研究を行った。その結果,第1に,人口面では,持高階層とその家構成員の再生産率が比例すること,その階層差は下層ほど奉公などによる転出率の高いことが重要な要因となっていることを明らかにし,奉公の減少など雇用形態の変化を通じて下層の家族生活がより実質化し出生率が高まり人口増加がもたらされたことが示唆されることを明らかにした。 第2に,明治初年の漁業の技術の発展段階を示す資料の発掘・解読により,動力導入以前の前近代的漁業技術の到達点と村落間の利害調整方法を分析し,初期的養殖技術の発生などを確認した。 第3に,宗門改帳に記載された名前の構造を分析し,名前解読の技術的基礎を提示するとともに,加齢につれて増加・減少する名辞と変化しない名辞が存在することを明らかにし,改名の存在と同時に名前の時代的変化を解明する手がかりを得た。 第4に,小社・森神の明治初年における石見地域の分布状況の資料により,銀山中心地域での貨幣経済との結びつきの強い稲荷社の隆盛と村落生活的な森神が皆無であることを確認した。 第5に,宗門改における半檀家をめぐる争論が,寺院を通じた宗教的住民把握が家族の持つ宗教機能に依存するが故の矛盾であることを具体的に解明し,宗教に依存しない近代的住民把握が要請される基盤を明らかにした。 第6に,たたらの山内(従業員)は,他藩の鉄山と交流するとともに,従来の説のように孤立したものではなく周辺農村と労働・婚姻などを通じて交流をもっていたことを資料によって裏付け,少なからぬ経済社会的影響を与えていたことを推察した。
|