平成21年度は、このプロジェクトの3年目である。当初の予定では、データ収集を行い、分析を開始する年度である。昨年までの2年間度に行った理論研究、および予備調査を経て作製してきたさまざまな尺度(Big-5性格特性、事生活満足度尺度、家庭生活満足度尺度、ワーク・ファミリー・コンフリクト尺度、その他)を使用し、大量のデータを収集した。そして、新尺度の信頼性を高めるために、構成概念のインディケータの等質性を再吟味し、異質と判定されるアイテムが削除された。 次に、本研究最大の目的であるワーク・ファミリー研究に取り掛かる前に、尺度の最大の難所である性格特性尺度の妥当性に関する研究に取り掛かった。尺度の妥当性を検証するためには、作製した新尺度が別概念(例えば、職務満足、ワーク・モティベーション等)の既存尺度との間に期待される連関を有しているかについて実証しなけばならない。それを検証するために、3つの研究を行い、開発した性格特性尺度の妥当性を確認することができた。具体的には、各性格特性尺度を転職意思、内発動機、継続学習行動等の既存の確立された尺度と関連付け、所期の連関が存在するかを検定した。その結果、尺度の妥当性が確認された。また、これら3つの研究内容は単に妥当性検定だけのために行われたのではなく、組織行動論分野に対する理論的貢献、及び実社会に対する実際的貢献を付加し得るような内容とした。3つの論文はすべて査読付学術に投稿され、受理されるに至った。
|