研究課題/領域番号 |
19330087
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加納 信吾 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特任教授 (20439293)
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研究分担者 |
児玉 文雄 芝浦工業大学, 大学院・工学マネジメント研究科, 教授 (20016538)
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キーワード | レギュラトリーサイエンス / イノベーション / レギュレーション / 先端医療 / レギュレーションギャップ / デバイスラグ・ドラッグラグ / プリンシパル・エージェント理論 / 境界組織 |
研究概要 |
本研究の目的はイノベーション発生後の後発事象としての「イノベーションを利用するためのルールが組成されない状態(=レギュレーション・ギャップ)」の発生現象に関して、一般的な分析フレームワークを構築し事例分析を通じて分析フレームワークの有効性を実証し政策的示唆を得ることにある。 典型的なレギュレーション・ギャップの事例としてDNA診断用チップにおける規制組成過程を解析した。時期を2つに区分し、第一段階を将来技術トレンド予測とレギュレーションのターゲット設定過程の分析とし、第二段階を規制の組成過程における組織と機能の分析とした。第二段階ではレギュレーション・ギャップを分析するため、プリンシパル・エージェント(P/A)理論において境界組織(Boundary Organizaion=BO)を設定するフレームを主軸とし(「P/A-BO」理論)、境界組織がプリンシパル(本研究では、医療における規制当局)とエージェント(医療の研究者や医療関連メーカー)の間を媒介する機能を6つに要素分解して解析した。境界組織の媒介機能を(1)ネットワーク機能、(2)ルール組成のアジェンダ設定機能、(3)規制組成のための研究戦略の設定機能、(4)管理主体の編成機能、(5)資源を確保する機能、(6)規制・標準組成機能の6つに分解し、各機能についてDNA診断用チップにおける広義の規制組成過程を米国(FDA)と日本(経済産業省と厚生労働省)で比較分析を行った。米国モデルではFDAが唯一の当事者として初期段階から産業側に積極的にコミットし規制や標準の組成に資源投入するのに対して、日本モデルではルール組成のための研究開発の必要性の認識が薄く規制の新規組成機能を支援する研究機能が弱いこと、事実上2つの規制当局で分業的アプローチがとられており初期コミットは経済産業省側が司ることにより、二重の境界組織構造が存在していることを明らかにした(論文投稿中)。
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