本研究の目的は、世界中からナレッジ等を入手・活用しながらグローバルな規模での競争力を築き上げる「メタナショナル経営」の視点から、液晶産業のグローバル競争を分析することにより、日本の競争力強化の研究を行うことである。 シャープは、堺に液晶と太陽電池の工場を併設し、液晶技術の太陽電池への水平展開を行っている。このため液晶、半導体、太陽電池産業の類似性と相違性の比較研究を、ビジネス・アーキテクチャの視点から行った。そして、これらの産業クラスターを、ビジネス・アーキテクチャにより分類することを提案した。また、ビジネス・アーキテクチャからみた、産業クラスターへの地場企業の参入条件を明らかにした。 また、ビジネス・アーキテクチャの概念を用い、電子の移動度のアナロジーから、知識の移動のし易さを「知識移動度」という新しい概念を提案し、その決定要因を明らかにした。 そして設計構造マトリクス(DSM)という手法をもちい、組織間の相互依存を定量的に評価し、その大きさによりビジネス・アーキテクチャが決まることを示した。 なお、ビジネス・アーキテクチャは、マクロな視点からは、プロセス日数で示される複雑性と戦略により、その方向が決まることを示した。 そして、「メタナショナル経営」よりも、強みをもつ製造業に適した「インテグラル・コアナレッジ経営」を提案した。この中心となる概念は、組織間または組織内で行われる「擦り合わせ行為から創造されるコアナレッジ」を核に、グローバル・ナレッジ・アネジメントを行うものである。
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