平成20年度は、初年度において行ってきた分析枠組みの構築の作業をベースとしつつ、具体的な調査研究を進めるとともに研究成果の発信を試みた。主たる実施事項は次の4点である。 第1は、事例研究の実施である。まず、産業別のアプローチとしては、サービス業においては教育産業と医療機関、流通業においては小売業、そして、製造業のサービス化に関しては特に家電産業を対象とした事例研究を行った。また、国際的な視点からのアプローチとしては、教育産業を対象に、サービス業の国際展開に関する事例研究を進めた。 第2は、サービス・イノベーションを捉える理論枠組み及び分析枠組みの整理である。サービス・イノベーションの論点の整理、ミクロな視点からの分析課題の整理、サービス業の国際化に関する理論課題の整理などを中心に、本領域における調査研究の枠組みや課題の整理を行った。 第3が、調査設計や仮説構築にあたっての現地調査の実施である。調査対象としては、アジア圏内でも特にサービス化の進展において文化的・制度的背景に特徴を持つと考えられる香港・マカオを選定し、現地調査を実施した。 第4は、研究会の開催と研究成果の発信である。まず、研究会としては、本研究組織に、流通科学大学の流通マーケティングを専門とする研究者を加えた研究会を開催し、調査設計や仮説構築等に関する議論を行った。また、研究成果の発信としては、日本商業学会を中心に、本研究プロジェクトの成果の発信を行った。特に、日本商業学会関西部会においては、報告者に外部からの実務家等も招きつつ、本研究プロジェクトの問題意識を統一テーマとした半日にわたるセッションを実施し、広く問題提起を行うとともに、研究成果を発信した。
|