平成21年度は、これまでに行ってきた分析枠組みの構築及び現地調査等の蓄積をベースとしつつ、具体的な調査研究を進めるとともに研究成果の発信を試みた。主たる実施事項は次の5点である。 第1は、事例調査を中心とした個別企業及び産業レベルにおけるデータ収集と分析である。韓国の現地企業を対象としたフィールド調査なども行いながら、小売・流通業、観光産業、教育産業、医療などの領域、あるいは製造業のサービス化も対象に、国際比較研究のベースとするための事例データを幅広く収集するとともに、その分析を行った。 第2は、企業の国際展開に関する分析視角の構築とデータの蓄積である。主に流通業を対象としつつ国際化研究の理論枠組みを整理した。また、特に教育産業を対象に、企業の国際展開における革新的な事例に関するデータの収集と分析を行った。 第3は、サービス・イノベーションや国際比較に関する定量調査研究の実施である。医療における満足意識、インターネットサービス(SNS)における消費性向、あるいは地域流通業の経営者意識を対象に、特に後2者については海外サンプルも含めたデータの収集と分析を行った。 第4は、サービス・イノベーションとマーケティング・システムの変容に関する理論仮説の検討である。流通・マーケティング理論へのインパクト、サービス有償化、創発的イノベーション等の観点から、サービス・イノベーションがもたらす理論的インパクトの所在と理論仮説の検討を行った。 第5が、研究成果の発信である。上記の研究成果について、書籍や論文あるいは日本商業学会を中心とした学会報告とともに、海外あるいは国際的な研究会での報告により、広く問題提起を行うとともに研究成果を発信した。
|