研究課題
基盤研究(B)
本研究の目的は、CSR(cooperate social responsibility)活動の経済性評価を支援する管理会計手法の可能性と課題を抽出することにあった。企業がCSR活動の影響ないし効果を経済性の観点から評価したいと望むのは、組織の内外のステークホルダーから当該諸活動が企業ならびに社会の持続的成長・発展に寄与するものであるとの合意を引き出し、CSR活動の持続可能性を確保したいとの思いがあるからだ。ただし、CSR活動の内容が多岐に及ぶことにくわえて、管理会計の貢献領域も限られているといわなければならない。おそらく、バランスト・スコアカード(balanced scorecard)の概念およびフレームワークを援用したCSRスコアカード(あるいはCSR戦略マップ)は上記の目的にとって有用な数少ないツールのひとつといえよう。このツールは、CSR活動の「マテリアリティ」、すなわちそれらの活動がどれだけ組織的利益を増加させるかをダイレクトに評価することはできないけれども、当該活動と将来における経済的リターンとの因果関係を提示する。われわれの研究は、CSRスコアカードがインタンジブルズとしてのCSRの潜在性を見える化することにどれだけ有用かをイノベーション・アクションリサーチをつうじて検証した。あわせて、とくにそれがCSRを履行することに対する組織構成員間の合意形成を促進する強力な支援ツールとなりうることを明らかにした。さらに、われわれはマテリアリティに代替する概念であり、インタンジブルズが経済的な結果に結びつく容易さに言及する「レディネス」の評価を可能にする新たなフレームワークを提示した。
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