研究課題
本研究の目的は、東アジア・東南アジア諸地域における高齢者のライフコースを、特に家族イベントに着目して行い、それを20世紀の社会変動とのかかわりで考察することによって、20世紀のアジア史を個人・家族・社会の重なり合いにおいて理解することである。今年度、最終年度の仕事として、4カ国5地域における質問紙調査を終了した。昨年度の韓国調査(ソウルおよびテグ)と中国調査(大連)に続き、日本(名古屋市)とフィリピンにおいて、ライフコースにかんする質問紙調査を実施した。日本では81ケース、フィリピンでは75ケースのデータを集めた。また、今年度は韓国、中国の研究協力者を招聘し、日本家族社会学会の国際セッションにおいて、調査結果の報告を行った。あわせて名古屋市女性会館において、市民対象の国際セミナーを開催し、研究成果を広く社会に公表する機会をもった。また日本社会学会においてテーマセッションを設け、研究報告を公募し、アジア・ライフコース研究会のメンバーによる成果報告とあわせて発表、議論する場を設けた。さらに「国際移動とライフコース」に関連する現代的イシューについてもインタビュー等を通して得た知見の公表を行った。植民地時代を含む20世紀を生きた方々のライフコースを聞き取る機会としてはまさに「最後の機会」であり、ケースが限られているとはいえ同一の質問紙で4カ国5地域のデータを収集しえたこと、「ライフコース・歴史・移動」に関連する研究ネットワークをつくることができたことが大きな成果であった。今後さらに収集したデータの精緻な分析を行い、成果を世に問うていきたい。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件)
家族社会学研究 21巻2号
ページ: 195-200
The Asian and Pacific Migration Journal Volume 18(4)
ページ: 497-517