研究課題
本研究は、近世から近代移行期の200年に着目し、徳川期の人口史料を利用することから、庶民の結婚、出生、死亡、移動を中心としたライフコースと、社会的・地理的移動を中心とした社会的ネットワークについて、そのパターンと要因を解明することを目的としている。本年は、これまで蓄積してきたデータベース構築を引き続き行い、利用可能なデータの分析を進めた。麗澤大学人口・家族史研究プロジェクト室を拠点とし、具体的には以下の3点の成果があがった。(1) データ整理とデータベース構築作業:都市の分析が可能なデータとして整理した播磨国加古郡高砂21力町村、クロス・セクションアプローチが可能な単年度農村史料の美濃国32郡(約2700世帯・13000人)の入力作業を終了し、チェック作業を開始した。また、今後の利用のためにマイクロフィルム約1600本の整理と、画像史料の紙焼き製本(約2400冊)の作成を終了した。(2) ライフコース分析:二本松藩二農村における出生と離婚のパターンと要因構造を明らかにした分析の成果を論文として発表した。また、飢饉時と平常時の経済変動に着目し、その人口学的影響について、結婚、死亡、移動というイベントを中心に分析した。これらについて、二本松藩における農村と在郷町の比較、さらに東北農村と、同時代におけるスウェーデン、ベルギー、イタリア、中国のコミュニティーとの比較研究を進めた。成果を日本人口学会、米国社会科学史学会(SSHA)にて報告した。また、国際人口学会(IUSSP)歴史人口学パネル主催のセミナーをホストし、ライフコース分析を進める研究者との研究交流を図るとともに、国際シンポジウムを開き、環境・経済危機と人口についての研究を一般に公開した。(3) ネットワーク分析:「ネットワーク分析」という方法を明治初期多摩地域の単年データに適用する方法を利用し、近代移行期における結婚ネットワークの分析として学術論文に投稿した。次年度は、本分析方法の歴史人口学データへの有効性についてさらに研究を進める予定である。
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