20世紀後半、技術の研究開発と従業員の能力の養成とが、男性の安定雇用の実現を促進した。雇用をめぐる社会参入について、男性の企業への統合と女性の離職というジェンダーによる差異の議論から、若年層における非正規雇用が問題化されている。 日本の若年層の雇用をめぐる社会参入について、本研究は、異なったセクター、すなわち組織のコンテクスト=組織領域(organizational fields)の比較に焦点をおいている。セクター内の同質性、セクター間の異質性は、経営側の戦略と若年層の側の戦略との関係に依拠している。 異なるセクターにおいては、技術的効率性、市場競争、社会的近接性の要件の異なる関連が、見出されると考えられる。若年層においては、技術的効率性、市場競争の要件を重視する戦略ではなく、社会的近接性の重視の戦略が、正規雇用と非正規雇用との対立を帰結していると言えるだろう。 本研究の目的は、若年層における非正規雇用と社会参入の問題について、組織領域内の同質性、および組織領域間の差異をあきらかにすることにある。なお、社会参入にたいする障害としての雇用の不安定の問題は、非正規雇用と正規雇用との両者の関連において解明される必要がある。 このような研究の目的を達成するために、インタヴュー、質問票など、質的方法、量的方法による調査を実施する。また、海外の研究者との研究交流(国際学会、ワークショップ)をとおして、国際比較の視座をとりいれる。
|