研究概要 |
本研究は,地域共同体における戦争死者慰霊祭祀の歴史と現状を解明し,戦後60年の社会変化によって引き起こされつつある,戦争死者慰霊祭紀施設の性格と意味づけの変化について検討することを目的とする。その目的を達成するために,(A)戦後建立された戦争死者慰霊祭祀施設の諸相,(B)戦争死者慰霊祭祀の歴史的変遷,(C)戦争死者慰霊祭祀と無縁慰霊祭祀との比較検討,の3つを行い,従来あまり言及されてこなかった戦争死者慰霊祭祀の(1)地域性,(2)歴史性,(3)民俗伝統との関わりを明らかにすることを目指した。 2007年8月に大正大学において第一回研究協議会を行い,情報交換を行うとともに,各部分担当者を定め,各自調査研究を行うこととした。 (A)の戦闘員死者慰霊施設を挺当する孝本は,宮崎県および長野県の戦死者慰霊施設の歴史的な変化について調査を行い,施設関係者からの聞き取りを行った。非戦闘員の戦争死者を担当する村上は,10月に兵庫県姫路市で行われた太平洋戦全国空爆犠牲者追悼平和祈念式の参与観察調査を行うとともに,全国戦災都市連盟関連の資料を収集した。 (B)を担当する森は,福島県伊達市月舘(旧下手渡藩)の「大位牌」についての資料収集をすすめ,下手渡藩の出自地である九州地域(福岡県)において調査を行った。また江戸期の戦争死者慰霊についての調査を,湊川神社(兵庫県神戸市),高野山奥の院(和歌山県),清涼寺(滋賀県彦根市)で行った。 (C)として,民俗社会における不慮の死者のための慰霊施設についての調査を担当する土居は,兵庫県神戸市にある行路死亡人慰霊施設,東塚についての調査,資料収集をすすめた。 2008年2月には全体として,鹿児島大学において研究発表会を行うとともに,西南の役,戦争死者の慰霊施設等の調査を行った。
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