本研究は、1970年代以降の大都市の転換過程とそれに関連する理論的展開を背景とし、わが国大都市の場合に無視できない少子高齢化という人口学的転換も視野に入れて、東京郊外の一自治体である三鷹市に焦点を当て、地域情報化と市民協働の実践がどのように結びつき、内発型都市活性化政策が展開されているのかを明らかにすることを目的としている。本年度は、すでに約40年の蓄積のある三鷹市のコミュニティ政策と立案から10年が経過した産業振興施策であるSOHO CITYみたか構想に焦点を絞った。 情報産業政策と市民協働 三鷹市のSOHO施策を実質的に担っている第三セクター(株)「まちづくり三鷹」の担当者および、インキュベータであるSOHOパイロットオフィス、三鷹産業プラザ、三立SOHOセンター、SOHOプラザAに入居している事業者(NPO法人を含む)9社に聞き取り調査を実施し、文献資料とも照合して、10年間の展開過程と現状を分析した。その結果、SOHO CITYみたか構想が税収、情報化、産業振興、市民参加の4つのナラティブをともなって登場したこと、インキュベータの設立・事業者の集積の両面で当初の予想を上回る成果を上げたこと、税収効果よりも街の活性化に寄与していること、情報インフラの優位性は失われてきていること、新自由主義的な構造再編を背景に、事業者の集積が生じていることなどが明らかとなった。 コミュニティ政策と市民参加 三鷹市のコミュニティづくりを担っている住民協議会の現状を把握するために、大沢、新川・中原、西部の3住協の役員(住民および職員)に聞き取り調査を実施したほか、NPO法人に移行した市民協働センターについても再度調査した。その結果、コミュニティセンターの性格が、行政の仕事に吸収される傾向があること、住民協議会の住区としての合意形成の困難性、市民参加における住民協議会の位置づけの曖昧さなどが明らかとなった。
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