研究概要 |
本年度は、最終年で、成果の一つとして、Springer社から、書籍を出版した。世界的な研究者であるHelmit Anheierハイデルベルク教授から序文で言政学の有効性について評価を得た。第一次言政学については、中国とインドの事例を中心に国際NGOの共通語として使われている英語の役割を問いつつ英語自体がグロービッシュとして用途に応じて変化している現状を調査した。地方語と標準共通語の関係をグラムシの文化ヘゲモニーの概念を用いて論じ、「ハブ言語」の概念をグロービッシュ(Globish)としてしばしば言及される英語に適用し、標準英語から派生する多岐にわたる地域語としてすでにアジアで勢力をもつSinglish, Konglish, Indian EnglishなどとしてGlobishをとらえ、その事例を具体的に中国およびインドのNGOにおける調査で報告した。英語がすでにメジャー言語でありつつも地方色を帯びつつあり、それでいて相互に理解可能なグロービッシュとしての発展しているものの、英語を母語とする人々の間でも下町英語(Cockney),アメリカ合衆国のBlack Englishなどのような特有のグロービッシュがあるように、新たな分野ではサイバースペースにグロービッシュの地方言語がつくりあげられつつある。メジャー言語の地方語の生成は英語にかぎらず北京官話(マンダリン)やスペイン語、ポルトガル語などにも共通する現象であった。活性化し拡大する国際NGOではまさに現場で働く人々がこのような言語の多角化にすばやく対応している最前線で対応していることが示された。さらに、国際NGOとしてのグッゲンハイム美術館(米国、スペイン、ドイツ、イタリアに美術館を有する)に関する事前調査を実施し、将来の一層の研究の手掛かりを得た。また、国内NPOの言語価に関する地道な調査を実施した。第二次言政学については、点字について大きな研究の進展がみられ、「触る」という受容感覚器に着目し、点字は「触覚言語」として、言政学の中にくみこめた。
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