平成20年度は、16名の連携研究者を交えた共同研究として2年目にあたり、初年度の社会事業に対する一般的見解に対して新たな一次史資料を収集・分析しながら地域社会・宗教・施設・団体・専門職・制度・政策という多様な観点から社会事業について歴史分析することを試みた。その結果、各個別課題の報告から従来の社会事業の歴史分析では十分に取り上げられなかった課題があることが指摘された。特に、地域における組織化の問題には地域的特徴や時期的特徴がみられ町村郡の再編との関連性で検討する必要性、施設運営では同種別でありながらも設置主体や運営主体が異なることでの実践の差異を検討する必要性、都市部に比べ農村部への社会事業の拡がりが遅れた分析の必要性、諸外国の制度が国内に与えた影響の問題、社会事業に関わった人物の諸外国での見聞・知見が社会事業に与えた影響の検討、院内救済から院外救済への転換時期が統計資料上で認められる点等が明らかになった。それらの報告と議論を通して、社会事業とは何かを定義するためには、社会事業で通説的に指摘されている画一的社会事象の説明では不十分で、社会事業の具体性や多様性を分析することの必要性を確認した。そのために、鍵概念として社会認識や、共同性の問題が現代社会にかかわる基本問題であることを共通認識したうえで、共に生活を支え合うという現代的理念における共同性確保の問題は、社会事業における国と地方の関係、都市部と農村部の関係、同種別施設における社会事業・実践の共通性並びに差異、国や自治体が国民生活に関与する理念と政策の検討を通して入間の尊厳性の確保問題として歴史分析することを継続していく。
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