研究概要 |
今年度は,前頭前野機能全般の可塑性の問題を認知リハビリテーションの過程から検討した。対象となったのは,リハビリテーション参加群53名(平均年齢73歳(SD=5.05),教育平均年数12(SD=2.26)),対照群54名(平均年齢70.1(SD=5.01),教育平均年限12.4(SD=2.92))である。リハビリテーション参加群は,半年にわたって簡単な算数課題と文章の音読や書きの課題が与えられた。対象群にはこうした課題は全く与えられず,評価のみが実施された。評価課題としては全般的な認知機能を評価する検査であるMini-Mental State Examination(MMSE)。前頭前野の機能を評価する臨床前頭葉機能検査(Frontal Assessment Battery at the bedside;FAB)を実施した。分析の結果,FAB課題において,介入後に,有意な得点の上昇がみられた。一方,MMSEにおいては,有意な上昇が確認できなかった.以上の結果から,健康高齢者でも,音読・計算課題の反復遂行により,前頭前野を中心とした認知機能の維持・改善が確認され,機能に可塑性があることが推察された。今後の課題としては,FABの詳細な分析とともに,抑制機能に特化した課題を並行して実施して,その変化をみることにある。さらに,MMSEのような大脳皮質の後半部分で司る機能との,効果の違いについて検討することにあるのではないかと思われた.
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