研究概要 |
今年度は,認知リハビリテーションの過程での、認知機能の変化を追跡調査した。立命館大学で実施している学習療法の実践をフィールドとして、参加者48名(平均年齢74歳)の2年間の認知機能の変化を分析した。分析の結果、MMSE,FABなどの認知テスト得点の変化をみると、認知リハビリテーションには参加しなかった統制群(51名,平均年齢70歳)は2年間で徐々に得点が減少する傾向がみられた。これに対して、認知リハビリテーションに参加した学習群では得点が徐々に増加する傾向がみられた。2年目の今年度では、2つの群間に統計上の有意差が確認されるまでになった。査定時以外には,特にリハビリテーションを実施していない統制群が自然の加齢変化の影響を強く受けていたと考えるならば、認知リハビリテーションによる認知機能低下への介入に効果があったものと思われる。さらに、抑制機能に特化したSRC課題やStroop課題での反応時間や誤反応数の変化をみると、特にStroop課題において効果が確認された。抑制機能は単一の機能というのではなく、その機能には,場所ベースの抑制機能や同一性ベースの抑制機能というように、複数のものが存在していると考えられているが、このことを裏付ける結果となった。 以上のことより、認知リハビリテーションという介入の実施により、認知機能、さらに一部の抑制機能に関しては、機能の上昇が確認され、抑制機能はある程度の可塑性を期待できるもの思われた。来年度は、さらに詳細な実験を行い、抑制機能の可塑性について分析する予定である。
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