研究概要 |
本研究では,個人内と個人間に「わたる」言語・非言語行動を動的に「つなぐ」統合処理過程の解明を目的とする.具体的には,コミュニケーション時の発話の非流暢性を示す言いよどみ(「エーと」など)や,発話に随伴する身体動作の非円滑性を示すやりよどみ(ためらいを暗示する動作)に着目し,言語・非言語行動の生成にわたる脳内機構の解明を行う. (1)介護動作の模倣課題 在宅介護状況の設定:看護師(教師)が,学習者(実験参加者)に介護動作を身ぶりと言葉を交えて示範(demonstration)し,学習者にその介護動作の実践を求める.学習者は,看護師が示範する一連の動作をビデオ映像で観察した後に,看護師の動作を模倣する.患者の存在が,学習者に看護動作の模倣に役立つことを確認した.また,看護動作の遂行に熟練していない学習者は,看護動作の模倣遂行時に,患者に対する声かけを求められると,動作の遂行に負荷を受けることが確認された. (2)物語の伝達課題 実験参加者は,アニメーションを観察し,アニメーションの内容を聞き手に口頭で伝達する.伝達課題においてジェスチャーの産出を制限すると,後の発話想起において,身振りの種類と数が影響を受けることを確認した. (3)ジェスチャーの生成課題 実験参加者は,具象物を示す写真を呈示され,具象物を扱う動作を示すことと,扱われた具象物の動きを示すこととを,求められた.ジェスチャーの生成には,想起と遂行において,容易な対象と,困難を伴う対象があることを確認した. (4)手話による伝達課題 手話による伝達時によどみの生起を分析するための文献を渉猟した. (5)上記の(1),(2),(3)の課題を用いて近赤外線光分光法による測定実験を実施し,それらの実験データの分析を開始した.
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