研究課題/領域番号 |
19330161
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
奥田 次郎 玉川大学, 脳科学研究所, 嘱託教員 (80384725)
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研究分担者 |
坂上 雅道 玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (10225782)
鮫島 和行 玉川大学, 脳科学研究所, 准教授 (30395131)
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キーワード | 意思決定 / 報酬予測 / 知覚的曖昧性 / ドーパミンニューロン / 黒質-線条体 / 内側前頭葉 / 強化学習モデル / 機能的MRI |
研究概要 |
本研究の目的は、人間や動物の意思決定プロセスにおける脳内の報酬情報処理と刺激知覚処理との関係をヒトの機能的MRI(fMRI)実験、実験動物(サル)における神経細胞活動記録、ならびに理論計算モデルの3点から包括的に解明することである。不明瞭で知覚的に曖昧な刺激に対する脳の報酬予測活動を調べることにより、刺激の入力から反応の出力に至る意思決定過程における知覚判断と脳内報酬処理の関係を実験的に検証し、現実的で柔軟な意思決定の理論モデルの提唱を目指す。 平成19年度は、知覚的に不明瞭な視覚刺激に対する報酬の予測過程を実験的に検討する課題パラダイムの構築から始めた。報酬を予測させる条件刺激として、知覚の状態を弁別成績という客観的指標によって個体問で統制し得るランダムドットモーション刺激を用い、右あるいは左のどちらか一方に動くランダムドットモーション刺激に対してジュース報酬を呈示する課題を施行した。ランダムドットの動きの一致度(コヒーレンス)を操作して知覚の状態を変化させたときの報酬予測的脳活動をヒトについてはfMRIにて、サルについては細胞外微小電極記録にてそれぞれ記録した。 結果として、神経活動記録実験からは、報酬関連ニューロンである中脳黒質ニューロンの活動が刺激検出の初期成分と刺激知覚の後期成分の2つの成分からなり、それぞれがその時点における報酬予測誤差情報を表現することが明らかとなった。また、fMRI実験からは、大脳基底核(尾状核)が主に刺激が明瞭な場合に刺激入力に即した報酬予測的活動を示すこと、これに対し前頭葉内側皮質が曖昧な刺激に対して被験者の知覚弁別に基づいた報酬予測活動を示すことが明らかとなった。これらの結果は、脳内報酬情報処理が刺激知覚処理と様々に連動し、従来考えられていたよりも柔軟かつ精緻に動物の報酬予測、ひいていは意思決定を修飾するということを明らかにするものである。
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