研究課題
がまんの問題は「行動抑制」あるいは「セルフ・コントロール」の問題としてこれまで研究されてきている。ルールに従ったがまんをするのが「行動抑制」、長期的な利益のために短期的な利益をがまんするのが「セルフ・コントロール」である。実験では行動抑制に関係する「ゴー・ノーゴー課題」と「多選択セルフ・コントロール課題」を訓練したサルを用いた。ゴー・ノーゴー課題では、ある刺激に対しては特定の運動反応を、別の刺激には運動反応の抑制をするようサルは求められた。セルフ・コントロール課題では、「ある刺激を選ぶと少しの報酬」がすぐ出るが、別の刺激を選ぶと大きな報酬がかなりの時間を経て与えられる」、という事態でサルは選択を求められた。注意欠陥多動性障害(ADRD)は注意欠陥・多動・衝動性を特徴とした発達障害であり、前頭連合野との関連がいわれている。メチルフェニデート(リタリン)はドーパミンの作動薬的な働きをし、ADHDの治療薬として広く用いられているが、その作用メカニズムについては不明のところが多い。21年度はがまんに関係した課題を遂行中のサルに対するメチルフェニデートの影響について行動レベルと神経伝達物質レベルで調べる研究を行った。メチルフェニデートを経口投与したところ、投与量により課題遂行の促進や障害が見られた。メチルフェニデートの投与量をいろいろ変えて、前頭連合野と線条体における神経伝達物質の動態を調べるマイクロダイアリシス実験を行った。前頭連合野では、臨床的適量をはるかに超えた量を投与しないとドーパミンの増加は見られなかったが、線条体では臨床的適量の投与で有意なドーパミンの増加がみられ、しかもその効果は臨床的効果の持続とほぼ平行していた。このことから、メチルフェニデートのADRD治療効果は、前頭連合野よりも線条体を介してなされていることが示唆された。
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