平成21年度の研究目的に照らして、次のような結果がえられた。 (1)幼稚園入園前から追跡を開始した幼児について、これまで4回の質問紙調査を実施した。この成果の一端をまとめて論文化した(雑誌論文参照)。また関連する内容で学会発表を1件行った。入園から半年間の印象的なエピソードを分析した結果、この時期の親の課題は母子分離と子ども同士の関係の2点であることが明らかにされた。 (2)奈良女子大学附属幼稚園における3年間の縦断的な観察調査を終了した。幼稚園児の環境利用という観点から複数の対象児を追跡し、物的環境、人的環境を基軸にしてデータの整理と分析を進めてきた。この内容に関連する学会発表を3件行った。幼児の発達と園環境の関係、幼児の環境資源の利用と発達の関係を、「文化性」をキーワードにしてまとめたものであった。 (3)幼稚園から小学校へ進学した児童((2)の対象児を含む)を対象に、さらなる追跡調査を開始すべく準備を行った。なお幼稚園から小学校への移行に関しては、2010年度にデータを収集する予定である。 (4)2010年1月から3月にかけて、幼稚園、保育所、小学校の連携に関する全国調査を実施した(約800校園を対象。平均回収率は44.2%)。対象地区は、盛岡市、滝沢村(以上岩手県)、川口市、北本市、飯能市、松伏町、小鹿野町(以上埼玉県)、大田区(以上東京都)、奈良市、大和郡山市(以上奈良県)であった。現在集計と分析を進めているが、ひとつの市区町村の幼稚園、保育所、小学校の全体を対象とした調査は従来行われておらず、多大な成果が期待される。
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