本研究は、21世紀の新しい国家・社会において求められる市民性とその形成方法の解明を目的とし、IEAによる国際的な調査問題を利用してとらえる日本の子どもの市民性の現状・特徴を諸外国における調査結果と比較分析することを通して、国際水準における市民性の形成を考察するものである。 この目的を達するために、IEAが実施したCitizenship Education Study (1994-2002)のテスト問題を用いて、日本の中学校3年生を対象にその市民性を調査した。その結果を参加28ヶ国が用いた分析枠組で分析し、それらとの比較をすることによって、日本の子どもの市民性形成の状況を明らかにし、その特質と問題点を検討した。既にアメリカ合衆国、連合王国などでは各国の調査結果を公表しており、また、IEAは28ヶ国全体の傾向の分析結果を公表しているので、それらと比較分析するとともに、参加国の市民性教育についての調査・分析も並行して行った。 日本において子どもの市民性の実態を大規模な調査に基づいて明らかにしている研究はなく、本研究によって明らかにされる市民性像は、今後の教育ならびに社会のあり方の検討の基礎資料を提供することになろう。 最終年度である平成21年度は、3年間の研究を総括し、その成果を研究成果報告書としてまとめるとともに、研究成果報告会を公開で開催した。成果の要点は、第1に、IEAの国際的な分析枠組みに照らして、日本の子どもの市民性像を解明したこと、第2に、国際水準に照らして、日本の子どもの市民性に対する評価を考察したこと、第3に、日本における市民性教育のあり方についての提言をまとめたこと、である。
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