学習障害、注意欠陥/多動性障害(以下ADHD)、高機能自閉症、アスペルガー障害等の軽度発達障害のある子ども(以下、対象児)を対象とした特別支援教育における具体的な支援策の構築・実現、教育的・社会的な急務課題となっており様々な取り組みがなされてきたが、そこには次のような問題点がある。(1)ある年齢段階のある発達障害へのある特性に対する一面的な支援に留まり、生涯発達的視点に立脚した障害児にとって「真」に役立つ有機的支援になっていない、(2)支援する側からの視点が前面に出た対策であり、対象児の視点に立脚した支援策ではない、(3)対象児の視点に立脚した支援策を考えるときに、何をそのキー概念(手がかりの核)にするか明確でない。そこで、本研究では、支援される側の生活世界や精神世界に注目し、対象児の視点に立脚した生涯発達的視点からの教育支援の在り方を検討していく。その際、支援の在り方は、"対象児自身がどのような自己意識を抱いているか、その自己意識の在り方によって周囲の者との関係性のあり方が大きく異なる"ことは言うまでもない。そこで、生涯発達的視点からの教育支援を考えるにあたり、「自己意識の発達を手がかりの核」にし、その発達に対応した支援教育を検討する。 これらの目的を遂行するために本研究では、(1)多面的視点からの心理教育的支援環境作り、(2)自己意識の特性をふまえた援助のための新たな視点の解明、(3)生涯発達支援システムの変容のプロセスの解明、の3つの柱のもとすすめてきている。
|