視覚障害のある児童・生徒・学生や高齢者が通学したり、学内で活動したり、社会参加をする際には、安心して、安全に学習できる環境の整備が必須である。特別支援学校では、安全・安心について、環境面でも教育面でも十分な配慮がなされているが、それ以外の教育機関では十分とは言えず、通勤・通学中やキャンパス内で視覚障害者が事故に遭遇するケースはある。そこで、安心して、安全に移動できる歩行方略のトレーニングプログラム作成と環境づくりに資することを目的に、視覚障害児・者の知覚・行動特性と環境との相互依存性を考慮した歩行支援手法を検討した。 本研究では、まず、視覚障害者が移動中に起こした事故やヒヤリハット事例を収集し、その原因を分析した。階段・段差やエスカレーター・エレベーターの事故防止策としてJR東日本及びエーディの協力を得て検証したバリアフリー・マークは、首都圏だけでなく広島、岡山、大阪等の鉄道に約80機、商業施設に約40機が敷設され、視覚障害者の安全対策に寄与することができた。また、ハイブリッド車等の音の静かな車が視覚障害者の移動に及ぼす影響に関する研究成果は、国土交通省の「ハイブリッド車等の静音性に関する対策検討委員会」や「日本福祉のまちづくり学会」の情報障害特別委員会等で活用され、具体的な安全対策に寄与することができた(NHKニュース、毎日新聞、朝日新聞、点字毎日新聞等に掲載)。さらに、交通エコロジーモビリティ財団等と共に作成した交通事業者教育訓練プログラム(BEST)の試行研修の実施、東京都盲人福祉協会等との共同研究による商店街を安全・安心に利用するための調査研究の実施とワークショップへの展開することが出来た。なお、本研究の成果は、自治体の福祉のまちづくりにおいても注目されており、研究代表者が審議会等のメンバーとして指名されている。
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