研究概要 |
視覚障害児が自らの残存視覚を活用した新たな情報処理システムを獲得するための支援教育について、その基礎研究を行った。生態情報処理系の特性、すなわち入力情報の処理が心内語彙辞書や予測によって促進・抑制される現象を認知神経科学の観点から再考し、障害児支援の教育現場にフィードバックできる学習理論を提案し、障害児のQOLの実質的向上を目指す。 平成20年度は、1.情報劣化の程度と単語認知の関係を、脳機能計測用に条件を絞った行動実験で確認した。実験過程で、本刺激が日本語の言語習得の客観評価に適することが判明した。2.同様の刺激をもちい、非侵襲脳機能計測(機能的磁気共鳴画像法・全頭型脳磁界計測法)を行った。機能的磁気共鳴画像法では、視覚的に劣化した言語情報,非劣化言語情報および言語として視認できない刺激の計3条件の脳活動を比較検討した。その結果、劣化言語情報条件では、左)視覚性言語野・左右)前頭下部ブロードマン47野・前帯状回と視覚注意に関わる脳部位が活性化し、非劣化言語情報条件では前部側頭葉・ウェルニケ野・後頭葉視覚野が活性化した。3.劣化単語情報に続き、物体情報の劣化についての実験を行うための準備を行った。延べ1500名のアンケート調査から、約200個の標準物体画像を作成した。来年度は、画像の評定をおこない、学童を対象にした実験を検討する。4.予測形成と視覚認知に関する実験については、行動実験をおこない、事前情報と順方向に視標が出るときと逆方向に視標が出るときの視標検出時間を比較検討した。その結果、事前情報が4つ程度与えたれた時に、反応時間に統計的有意差を認めた。本実験により、予測形成に要する情報量が明らかになった。来年度は、予測が輝度低下を修復するかどうかを明らかにするための行動実験を行う予定である。
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