主に代数曲面上の曲線およびHiggs束について研究した。 第1の主要成果は、ある種の位相幾何的条件をみたす一般型代数曲面上の曲線の次数を曲線の種数で上から具体的関数で評価するという結果である。この関数は種数と曲面の位相不変量に関する代数関数として与えられる。またこの式のかたちから、上記の位相幾何的条件が必要なことは、自然に出てくる。また一般には、この評価は最良である。次数が有界であるということ自身は、Bogomolov の1970年代の結果であるが、具体的かつ最良の評価を与えたことは画期的であって、いわゆるABC予想の幾何学的場合の類似の解決を含んでいる。本研究の成果は2007/2008年度Bourbakiセミナー (Gasbarri)でも言及されている。 第2の主要成果は、安定Higgs束がみたすChern類の不等式(Simpson-MochizukiによるBogomolov-Kobayashi-Yau型不等式)を完全に代数的な手法で証明したことである。標準的計量を構成することによって示された従来の微分幾何ないしは解析的な方法とはまったく異なった簡明な証明である。Higgs 束は、様々な分野で注目されている対象であるから、基本的な性質を様々な視点から感泣することは十分意義有ることと考えられる。関連する成果は2009年春に出版予定である。 以上のほかに、第2の成果を一般次元に拡張することや、複素シンプレクティック多様体の構造を研究したが、まだ論文とするにはいたっていない。
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