研究概要 |
Felder-Wieczerkowskiによりセルバーグ型積分に付随した局所系係数のホモロジー群におけるパスの族への量子群U_q(sl_2)の作用が考察されていたのは90年代初頭であったが,数学的には不満足なものであった.代表者は近年の局所系係数のホモロジー(ねじれホモロジー)の理論の進展を踏まえ,ホモロジーの反対称成分への作用を具体的に決めることにより,これらをきちんと定式化することに成功した. 一般超幾何函数のモノドロミー群を具体的に計算するという仕事は古典的な問題であるが,具体的なサイクルを追跡しながら決定する技術が不足していたために,不満足な形の結果が殆どであった.これに対し,代表者は,近年開発した方法を用いて,具体的に書き下すことを行った.さらに,その具体的表示を応用することにより,モノドロミー表現の既約性に関する必要十分条件を決定した(必要性はBeukers-Heckmanによる). 代表者は吉田正章・趙康治(九大)との共同研究により,被積分函数の指数が退化している場合(共鳴状態)のホモロジー・コホモロジーの挙動を調べた. 代表者は若山正人(九大)およびJ.Farout(パリ第6)との共同研究により,チューブ型エルミート対称空間上の調和解析を行った.先行していた若山-Faroutの結果は一変数の球フーリエ変換に関するものに限定されていたが,これを多変数のものに拡張することができた.そこでは,多変数Meixner-Pollaczek多項式の定義およびその積分表示が役立った. 微分方程式の解の接続問題を考察する過程で,ねじれホモロジーの交叉数が利用できることに気づいた.そして,一般超幾何函数の場合に,その方法を実行し,接続係数の再導出を行った. アクセサリー・パラメタの無いフックス型微分方程式の解の積分表示を原岡喜重(熊本大)と研究した. ねじれサイクルの交叉数の理論の応用としてジョーンズ多項式などの量子位相不変量の研究をしたが,今回は,協力者・川越謙一(金沢大)が新たに進展を与えた.
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