昨年度までに得られた、インスタントンの数え上げを用いてドナルドソン不変量とサイバーグ・ウィッテン不変量が代数曲面の場合に等しいことを証明するという研究成果と、クラスター代数と次数付き箙多様体上の偏屈層の関係について、いくつかの国際研究集会で報告した。特に、London Math.Societyから、Hardy Lecturorとして招待され、連合王国内の計4ヶ所で講演を行った。 研究面では、量子アファイン展開環のテンソル積の構造について、代数的なアプローチと幾何学的なアプローチ両方を研究した。代数的な方では、今までに分かっている結果を講義録として整理した。特に、テンソル積の大域結晶基底の存在に関する柏原の結果と、その構造をPBW基底を用いて決定したBeckと研究代表者の研究について、紹介した。現在、校正中でアメリカ数学会から出版の予定である。 幾何学的な方向では、箙多様体を用いて作られる合成積代数の上の余積構造の一般論について、研究した。すなわち、箙多様体の部分多様体であるテンソル積多様体を用いて、偏屈層の制限関手を定義し、それが余積を与えることを、(少なくとも特別な場合に)チェックした。また、昨年度に引き続きクラスター代数と次数付き箙多様体の上の偏屈層の関係を、特異台の立場から研究した。(これらは論文準備中)
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