研究課題
本研究は、幾何学的群論の諸問題に包括的に取り組むことを目指している。本研究において重要な研究道具、考え方と対象を挙げると、双曲性、双曲群、写像類群、擬準同型などである。今年度の実績の第一は、カルガリ氏との共同研究で、双曲群と写像類群の交換子長について、非常に重要な結果を得たことである。具体的には、交換子長について、0の周辺にギャップが存在するごとを示した。これは、カルガリ氏が双曲多様体についてすでに得ていた定理を拡張し別証明を与えるものでもあり、国際的に高い評価を得た。次に、カプラス氏との共同研究で、カッツ・ムーディ群の擬準同型を構成した。これは著しい応用があり、それが次の定理である。「単純な有限表示群で、交換子長が有界でないものが存在する」。これは、群論における、ある未解決問題の解決を与えた。国際的にも高く評価されている。3番目に、ダマニ氏との共同研究で、写像類群の部分群について顕著な結果を得た。主定理は次である。「Gを曲面の写像類群とする。Hをエンドの数が一つの有限表示群とする。Gの部分群で、Hと同型で、かつ、単位元以外はすべて擬アノソフであるようなものは、Gでの共役を除いて有限個しかない」。これは、ボウディッチがすでに得ていた結果を著しく改善するものであり、かつ、双曲幾何のおける重要な問題の解決への大きな貢献であり、国際的に高く評価されている。最後に今年度は、「Handbook of Teichmuller Theory, Volume II」がヨーロッパ数学会から出版された。これはタイヒミュラー空間のハンドブックで、分野の最新研究の状況を網羅的に記述したものである。その一部を執筆した。とくに、写像類群の擬準同型と有界コホモロジーについて解説した。これは、写像類群とタイヒミュラー空間の研究と研究者に長く大きな貢献があると期待される。
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Geom.and Funct.Anal. 19
ページ: 1296-1319
Groups, Geometry, and Dynamics 4
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