研究概要 |
今年度は本研究課題の最終年度であるが、二つの大きな成果を得た。一つは、Bestvina,Brombergとの共同研究で、曲面の写像類群の漸近次元が有限であることを示し、その論文をアーカイブに発表し、専門紙に投稿したことである。この研究は結果が顕著であるだけでなく、その手法も大きな成果である。すなわち、有限生成群の擬ツリーへの作用を組織的に研究する枠組みを作った。理論には二つの側面があり、一つはそのような作用が存在するための十分条件を見出したこと、もう一つはそめような作用がある場合のいくつかの興味深い帰結を導いたことである。一つの帰結が写像類群の漸近次元に関するものである。ここで構築された理論は、今後の幾何学的群論の展開において、重要な役割を果たすと考えられる。実際、我々は、この理論をもとに、有界コホモロジーへの応用に取り組んでいる。 もう一つの大きな成果は、Dahmani,Guirardelとの共同研究で、interval exchange transformationのなす群、IET,の構造について幾つかの顕著な結果を得たことである。この成果についても、論文にまとめ、アーカイブに発表し、専門誌に投稿した。具体的な成果として、IETが連結なリー群を部分群で含むなら、その部分群は可換であることを示した。これは、J.Franksが提示した問題に否定的な解答を与えた。また、IETの部分群でランプライター群に同型であるものが存在することを、実際に構成して証明した。これは、指数的増大度を持つ部分群の、初めての例の一つである。この研究はIETに関する先駆的な研究成果だと考えられ、これからも研究を継続する。
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