研究概要 |
特異ファイバーの大域的な消去可能性と可微分構造の関係について,同境理論の観点,及びホモトピー論的障害類の観点から研究を押し進めるため,ハンガリーのAndras Szucs氏に専門的知識の提供をお願いするとともに,研究連絡を行った.その結果,写像芽の場合において,そうした同境理論や,障害類の定式化に関する新たな知見を得た.これは今後,特異ファイバーの場合を研究するための大きな指針となる,重要な知見である.また,多様体の微分幾何的構造の特異構造への一般化として,特に,4次元多様体上のLefschetz構造を,特異点を持ったものにまで対象を拡張することを考えた.その研究のため,Inang Baykur氏を招へいし,研究連絡を行った結果,以前に我々が得ていた結果を解釈しなおすことにより,それが既にそうした拡張に関する良い結果を与えていることが判明した.すなわち,これまでに特異点論的観点から写像の特異点の消去を考えてきたが,それが特異Lefschetz構造の研究に役立つことが明らかになった.このことは,既存の研究の今後の大きな方向性を指し示している点で大変興味深い.また,特異写像を用いて4次元同境群についても研究を行い,複素射影平面が自然な生成元となる無限巡回群であることを,まったく新しい観点から証明することにも成功した.その結果,既存の,特異ファイバーによる符号数公式に新しい証明を与えることもできた.このアイデアは,特異ファイバーのまわりに多様体を対応させるものであり,特異写像の同境の研究にこうしたアイデアが使えることが十分に期待できる.このように,今年度の研究により十分な成果が得られたと言うことができる.
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