研究概要 |
1. 非有界な多重連結領域から,(a)一般直線スリット領域,(b)共線スリット領域,(c)円弧放射スリット領域への数値等角写像の方法を提案し,その有効性を数値実験で検証した.また,それぞれの研究について論文発表を行った.これらの成果を拡張すれば,代用電荷法の適用によって,著名なKoebe(Acta.Math.,1916)の39個の正準スリット領域の最初の13個への数値等角写像が簡単かつ高精度に実現可能であると期待される. 2. 上記の多重連結領域の数値等角写像の方法の一部をScilab Toolboxとして実装した.多重連結領域の等角写像のための数学ソフトウェアはまだ知られていない. 3. 波動問題(ヘルムホルツ方程式)に対する代用電荷法の性質を理論・数値実験の両面から調べ,ポテンシャル問題に対する代用電荷法と比較・検討した.数値実験から,ポテンシャル問題に対する代用電荷法の性質が波動問題を含め様々な偏微分方程式の問題に対し普遍的に成り立つことが予想される. 4. 多様体上の有限要素解析の可能性について検討し,等角写像の問題とも関連の深い曲面上の領域における楕円型境界値問題に対して有限要素法の適用が可能であることがわかった. 5. 数値等角写像の方法として特異積分方程式を用いるものがある.この方程式を解くためのSinc法の提案と,その誤差解析を行った.また,代用電荷法において,悪条件の連立一次方程式を解く必要が生じる.そのための方法として,特異値分解による方法やクリロフ部分空間法に関する研究を進めた.
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