研究概要 |
数年前研究代表者は連携研究者日合氏(東北大)と共同研究を行い,作用素平均の一般論を構築し,Springerレクチャーノートとして発表した。この理論では,スカラーに対するある種平均と作用素平均が1対1に対応している。また,この作用素平均のユニタリ不変ノルム比較の為には,対応するスカラー平均のある種の比として決まる関数の正定値性または関連する行列の正値性のチェックが必要となる。 ここ数年来研究代表者は,power difference mean, Heron型mean, Binomial mean(およびそれらの自然な派生物)といった典型的平均の研究を行い,これらの比として現れる多くのクラスの関数の正定値性を系統的にチェックし、結果を蓄積してきた。それらの結果をまとめて,AMS Memoirとして発表した(電子的に既にAMSより公開されており,冊子体の形でも近日中に出版されることとなっている)。これにより,パラメータを含む各種作用素平均のノルム比較に関する極めて精密な結果が得られ,作用素平均の研究が大きく前進した。また,この正定値性の判定に関する研究の過程において,正定値性よりずっと強い性質である無限分割可能性,infinite divisibility(すなわち,関数の任意の正冪も正定値であるという性質)の作用素平均の研究における重要性も明らかにとなり,更に多くの関数の無限分割可能性に関する知見を得る事にも成功した。 研究分担者綿谷は,指導中の大学院生と,複素関数論でおなじみのBlaschke積を利用したToeplitz composition C^*-環の研究をおこない,その研究成果を発表した。
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