熱方程式の解の最大点挙動について、特に無限遠点において速く減衰するポテンシャル項を係数にもつ熱方程式を対象に壁谷喜継氏(大阪府立大)と共に研究を行った。この研究を通して、熱方程式の解の最大点挙動は方程式の正値定常解の無限遠点の挙動に強く影響されることを示し、解の最大点が無限遠点に近づく早さ、その方向、さらに最大点の個数について詳しく解析を行った。この他、川上竜樹氏(東北大学)と共に非線境界条件下における熱方程式の解の大域的漸近挙動について研究を行い、非線形の度合いを表すある指数がソボレフの不等式の観点から見た臨界指数より小さい場合には、大域解は熱方程式の解のように振る舞うか自己相似解のように振る舞うかのいずれかであることを示し、それらの初期値に関する構造定理を構築した。半空間のような非有界領域において、このような非線形境界条件下における大域解の詳しい構造に関する先行結果はない。一方、Paolo Salani氏(フィレンツェ大学)と共に、熱方程式に代表される様々な拡散方程式の解の等高面の形状について、時空間変数としてみた幾何的性質を研究すべく、放物型準凸等の概念を導入し、環状領域における熱方程式の解がその性質をみたす十分条件について詳しく考察を行った。この放物型準凸は本研究によって初めて導入された概念であるが、解の等高面の凸性解析において基本的な概念であると考えている。また、平成21年6月15日から19日の間、東北大学にて国際研究集会「1st Italian-Japanese workshop on geometric properties for parabolic and elliptic PDE's」を開催した。この研究集会を通して、放物型方程式および楕円型方程式における解の形状に関するイタリアおよび日本の研究者を招き、活発な意見交換や議論を行った。
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