研究課題
有理関数による複素力学系の理論とクライン群論と類似点をあげたサリヴァンの辞書を説明するものに、代数的対応による複素力学系の理論がある。それはzとwの2変数の多項式p(z,w)=0により、陰に定義された代数的関数の反復合成による複素力学系を考えることである。この代数的対応からヒルベルト空間上の作用素からなるC^*-環を構成し、これにより作用素環の次元で、有理関数による複素力学系の理論とクライン群論を統一することに一歩近づいた。今回の研究では構成した環の極大可換環の構造を調べた。有理関数の場合にまず手始めに考察し、特にJulia集合上で考えれば、係数環が極大可換環になっていることの証明に成功した。分岐点の存在のために有限基底を取れないため係数環への条件期待値の存在を示すのが解析的に困難であったが、係数環を連続関数から、本質的に有界な可測関数に置き換えることと、そこでは有限基底が存在することを利用することにより、この困難を解決した。これ以外は通常の技術を使って長さが有限の加群から生成されるところでは、極大可換であることをます示し、その上でその帰納的極限でのところまでも、極大可換であることを、条件付期待値をうまく使うことで証明できたのである。この結果は重要で、これにより、複素力学系に対する軌道同値の研究をすすめる第一段階が達成したことになる。カントール集合上の力学系や記号力学系のときの類似をさぐることで、極大可換環の言葉で軌道同値であることの判定をする可能性を開いた。
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J. Funct. Anal. 256
ページ: 959-991
Proc. Amer, Math, Soc. (to appean)
J. Openatu Thevry (to appean)