(1)この研究では有理関数や超越整関数などの複素平面上の有理型関数Rの反復合成(R^n)_nによる複素力学系から、ヒルベルト空間上の作用素からなるC*-環を構成する。この研究の目的は複素力学系と作用素環という二つの異なった分野の思いもかけない結びつきを解明することである。 (2)2次以上の有理関数は位相同型写像ではないので、接合積でもって作用素環を構成することができない。そこでこれをリーマン球面上の有限被覆写像なので、分岐指数を使ってそのグラフ上の連続関数全体は係数環上の双加群になる。この双加群からCuntz Pimsner構成を使ってC*-環を対応させる。リーマン球面全体とJulia集合とFatou集合のそれぞれ上で考えることで、3つのC*-環を構成する。 (3)分岐点のような特異点の構造と付随するC*-環との関連を研究する。そのC*-環上のK理論やKMS状態(平衡状態)の言葉で、元の特異点の構造を記述することを目指す。
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