前年度の実験、解析で得られた結果を取りまとめ、2009年8月にアメリカ・サンディエゴで開催されたSPIE会議、および2009年9月に山口市で開催された日本天文学会において研究発表を行った。 飛騨天文台ドームレス太陽望遠鏡の垂直分光器に常設する補償光学系の開発を進めるため、2009年5、8、11月、および2010年3月に太陽観測を実施し、装置の構築を行った。この装置を用いた観測の結果、シーイング状態が比較的良くない場合でも、本陽黒点を参照として装置が有効に動作することを確認した。前年度には、シーイングの良い場合に粒状班を用いた波面補償に成功しており、多くの場合に補償光学系が有効に働くことを確認したことになる。 昨年度から引き続き、新しい原理に基づいた上空用波面センシング法の開発を進め、計算機シミュレーションを行った。その結果、開発した手法の有効性が確認できた。現在、開発した手法を観測的に評価するための上空用波面センサーの開発を行っている。開発終了後、すぐに装置に組み込んで、multi-conjugate波面補償の実験を行う予定である。波面センサーの開発に予定よりも時間がかかってしまい、計画年度中にmulti-conjugate補償光学系を動作させるには至らなかったが、必要な要素技術の開発はすでに終了しており、近い将来に結果を出せるものと考えている。
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