研究概要 |
米国ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)、国立天文台天文機器開発実験センター(NAO)と共同で、星間物質の振動回転スペクトルの回転構造を分離しうる程度の高分散を実現するための、ZnS,ZnSe製のイマージョングレーティングの詳細な溝加工試験を行った。LLNLにおいては、独自に開発された超精密加工機PERLを用いた切削加工を、また、NAOでは研削法およびフライカット切削法を適用した。その結果、PERLによる切削加工によって、可視光域において高い相対回折効率を達成する精密な溝加工が可能であることが明らかになった。この結果を踏まえ、更なる高分散(R=100,000)が実現可能な大型グレーティングの溝加工を行い、イマージョングレーティング回折格子のサンプルの製作を行った。可視光での光学評価の結果、格子形状(角部分の形状品位、および溝ピッチの誤差)の点でほぼ仕様を満足しうることが初めて明らかになった。国内における精密なグレーティング溝加工体制を確立するためには、諸々の加工条件(バイトの形状、加工速度など多様なパラメータを含む)が重要であるとともに、用いる精密加工装置の剛性と、厳密な温度条件管理が必須であることが明らかになった。 この研究と並行して、ゲルマニウムイマージョングレーティングとSi:As IBC二次元アレイ検出器を用いた冷却エシェル分光器の開発に世界で初めて成功し、波長10μm領域において波長分解能30,000を達成した。この分光光学系を用いた、代表的な星間分子の実験室環境での振動回転発光スペクトルの取得、解析を行った。
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