本計画は可視光帯ではプローブできないz>7の高赤方偏移宇宙にある銀河やクェーサーの近赤外線探査を行うことを目的したものである。一方、z>7の宇宙では宇宙空間に存在するガス(一般に銀河間ガスと呼ばれる)の再電離が行われた時期に相当しており、宇宙再電離源の探査も極めて重要になる。その様子を直接ライマン?輝線をプローブとして観測することは原理的に可能である。MOIRCSによる、近赤外線狭帯域ディープサーベイを行い、研究を進めてきている。観測天域はGOODS-SouthC秋のシーズン)とGOODS-North(春のシーズン)に分けて、効率よく遂行できるよう計画を立案した。現在のところGOODS-North`のデータが取得され、データの解析を行っている最中である。この解析及び研究の推進のため、支援研究員を雇用し、デーダ解析専用シズテムの構築を行った。国内外の関連研究者(研究分担者の市川隆氏をばじめ、松田有一氏(京都大)やDave Sanders(ハワイ大)、Rychard Bouwens(UCLA)、Richard Ellis(Caltech)、Anton Koerkemoer(STScI/NASA)らとの研究連絡を行い、国際的な共同研究として、すばる望遠鏡とMOIRCSの組み合わせを最大限に有効利用ずる戦略をとっている。このような戦略の中で、撮像探査のみならず、高赤方偏移宇宙にあると考えられるクエーサー(活動銀河中心核)の分光観測を行った(候補天体はX線探査で見つかったもので、可視光帯では全く見えない天体であり、近赤外線での観測が必須になる)。約10個の候補天体の近赤外線分光データをMOIRCSを用いて取得し、現在データ解析中である。現在確認されでいる、最も遠方の銀河の赤方偏移はz=6.96であるが、我々の観測により、このレコードを破る可能性が出てきた。クェーサーも宇宙再電離に貢献している可能性が高いので、星生成銀河と両面から研究を進めていくことができる意義は高い。
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