すばる望遠鏡の高性能近赤外撮像分光器MOIRCSに狭帯域フィルター(中心波長=2.3ミクロン)を用いて、深宇宙探査を行った。今年度は赤方偏移z=2.5にある電波銀河4C23.56周辺の天域をカバーする観測を行った。その結果、この電波銀河に付随していると考えられる星生成銀河を14個発見した。電波銀河から離れた天域ではこのような星生成銀河は発見されなかった。これらのことから、この電波銀河周辺には一般の天域に比べて銀河の個数密度が高い、いわゆるオーバー・デンシティ領域(個数密度が高い領域)であることが判明した。赤方偏移z=2を超える宇宙に置いては、まだ銀河団の検出が十分に行われていない。そのため、この電波銀河を含む天域は、今後の原始銀河団形成論の研究にとって非常に重要な情報を出してくれることが期待される。 また、MOIRCSで行っている深宇宙探査との関連で、ハッブル宇宙望遠鏡の新しい近赤外線カメラWFC3によるハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールド(HUDF)の観測データを用いて、赤方偏移z=8の銀河の研究も合わせて行った。この研究でz=8の銀河を8個同定し、それらの紫外線光度関数を新たに導出した。その光度関数に基づき、宇宙再電離を可能にする電離光子の放出率を評価したところ、電離光子の銀河からの離脱率が70%あれば、これらの銀河からの電離光子で宇宙再電離が可能であることを見出した。この状況では、銀河そのものの電離ガスから放射される電離ガス連続光は無視できる。そのため、z=8の銀河尾紫外連続光が異常に青くなっていることが説明される。この解析で判明したことは、z=8の銀河で生成された星の重元素量が近傍銀河で生成される星のものと比べて、非常に少ないことが要求されることである。以上のことから、ほぼ第一世代星の星と同レベルの少ない重元素量のガスから星が爆発的に誕生し、さらにそれらは超新星爆発をおこしてホット・バブルが吹き荒れているような銀河形成期の描像が得られた。今後の銀河形成期の研究に多大な貢献をすることができた。
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