研究課題
太陽観測衛星「ひので」が明らかにしたように、太陽彩層では非常にダイナミックな現象(ジェットや加熱)が起こっている。これらの現象は10秒以下の時間で大きく変化するため、現象を的確に捉え正確な物理量、特に磁場・速度場の導出のため、本研究では2次元同時分光偏光観測手法を開発することで現象の物理過程導出を目指している。昨年度までで目指す2次元同時分光手法はほぼ確立し、今年度は微調整を行いつつ複数の観測領域で観測を実施した。装置の基本はマイクロレンズアレイにより像を2次元分割し、2次元分光データを取得するもので、2つの可変遅延液晶リターダーにより複数の直交偏光成分をすばやく取得するもので、分光器をもつ大抵の太陽観測施設で適用可能な汎用性を持つことが特徴である。本装置では光球磁場観測のためのFe I 630.2nm、或いは彩層観測用のHα線いずれかの観測を実施した。現在、太陽活動が低調で静穏領域での観測に限られたが、「ひので」や地上観測所の高速ファブリ・ペロー・フィルター装置などとの共同観測で、彩層ダイナミック現象に関して以下の新たな知見が得られた。静穏領域彩層で良く見られるジェットは2重構造を示すものが30%ほどを占める。このジェットの根元の磁場構造は単極構造を示しており、より大きなジェットの起源で想定される浮上双曲磁場に伴う磁気リコネクション過程は適用できない。根元の単極磁場は小さな空間構造を持ち、時間変化が激しく全体的に渦運動や接近運動を示しており、結果として磁力線のねじれを引き起こし、部分的な磁気リコネクションが起こり、このエネルギーがジェットの加速に寄与していると予想される。また、太陽縁彩層ジェットのHαスペクトル線には50km/sを超える大きな視線速度が見られ、磁力線構造を変化させる現象が伴っていることがはっきりしてきたと言える。
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