研究概要 |
大強度重陽子ビーム照射装置を用いて、液体と固体Li標的を対象に、^6Li(d, α)^4He及び^7Li(p, α)^4He反応実験を行い、入射エネルギー22.5〜70 keVの反応収量を得た。観測された励起曲線は、液体標的と固体標的とで明らに異なり、次の特徴を示す。(1)収量は、常に液体Li標的の方が固体の収量よりも大きい。(2)入射エネルギー40 keV以上では、入射粒子の速度が大きくなるほど液体標的の方が大きくなる。(3)入射エネルギー40 keV以下でも収量は入射エネルギーの減少に伴い増加する。 精度を上げた再解析を行った結果、液体と固体状態では、液体状態の方が遮蔽エネルギーが大きく、その差ΔU_s=205±35 eVが得られた。これは、液体Li+が流動性のある正イオンとしてクーロン遮蔽に寄与していると考えられるものの、単純なデバイ模型による予想値よりは小さな値である。 他の液体標的として、LiNO3を対象に^7Li(p, α)^4He反応実験、入射エネルギー22.5〜70 keVにて実行し、遮蔽ポテンシャルを求めた。結果は、固体標的に対したは、330±110 eV、液体標的に対しては、190±82 eVとなり、液体標的の方が大きくなるという金属Liとは異なった結論となった。現在、その理由を検討中であるが、分子量の大きなNO3-イオンは、遮蔽ポテンシャルには寄与していないことが考えられる。 液体金属Li標的に超音波を付加し、キャビテーション状態を作り出し、その上でLi+p, d反応の測定を行えるよう、真空槽の設計と設置を行った。テスト実験が開始されている。
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