研究概要 |
2006年に取得されたIceCubeデータを解析し,10^7 GeVを超える極高エネルギーを持った宇宙線由来ニュートリノ信号を探索した.ニュートリノ信号同定において鍵を握る,検出器の信号応答および大気ミュー雑音事象を実際のデータを用いて研究して,莫大な雑音を排除して極高エネルギー事象のみを選択的にすくいあげるアルゴリズムを開発した.その結果125日間にわたり取得された2006年データの中にはニュートリノ信号候補は存在せず,結果としてニュートリノ流量上限値をつけた.エネルギー流量にして約10^<-6>GeV/cm^2 sec sr である.この結果は完成時の10%に相当する検出器群を用いて得られた結果であるが,その手法を拡張し,IceCube完成時において適用すべき解析手法およびその結果予想される信号感度の見積もりを行った.現在理論的に予想されている最高エネルギー宇宙線由来のニュートリノ流量を仮定すれば,年間1.2事象程度がlceCube実験で観測されることがわかった.これはlceCubeニュートリノ観測装置が極高エネルギーニュートリノを実際に弁別でき得ることを明確に示した結果であり,2007年以降の観測データを用いて,ニュートリノ信号を世界に先駆けて検出する見通しをたてたという大きな意義がある.平成20年度以降,この結果をベースラインにしながら更なる改良を続け,極高エネルギーニュートリノ信号探索を継続して行う.
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