2007年に取得されたIceCubeデータを解析し、10^7 GeVを超える極高エネルギーを持った宇宙線由来ニュートリノ信号を探索した。ニュートリノ信号同定において鍵を握る、検出器の信号応答および大気ミュー雑音事象を実際のデータを用いて研究して、莫大な雑音を排除して極高エネルギー事象のみを選択的するアルゴリズムを開発した。その結果240日間にわたり取得された2007年データの中にはニュートリノ信号候補は存在せず、結果としてニュートリノ流量上限値をつけた。エネルギー流量にして約3x10^<-7>GeV/cm^2 sec srである。この値は理論的に予想されている値の約一桁上であり、2011年初頭に予定されているIceCube装置の完全稼動により、前人未踏の高エネルギー宇宙ニュートリノ検出を確実に遂行できることを示している。 また本年度は、氷河上層部に展開する空気シャワー観測装置IceTopとの連動観測データの解析を本格化させた。宇宙ニュートリノ信号探索の主雑音である、大気μ束事象を研究し、シミュレーションデータとの比較検討を行なった。観測データは宇宙線組成が鉄核などの重原子核が主であることを示唆している。しかしμ束からのチェレンコフ光放射形状は、シミュレーションとの顕著な違いを示し、束内のミューオンエネルギー分布が予想よりも硬い可能性を表している。来年度も引き続き探求する必要がある。
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