2007-2008年に取得された1/4フルスケール相当のIceCube実験データ解析を終了させ、その結果を国際会議で発表、論文として纏めた。論文は2010年中に出版・公表される予定である。さらに2009-2009年に約380日間連続観測が行なわれた1/2フルスケールのデータ解析を開始し、実データに加えるクオリティーカットを工夫することでシミュレーションによる予測との一致を大幅に改善することに成功した。この結果、極高エネルギー宇宙ニュートリノ検出感度は前年比で8倍以上高くなり、ニュートリノ流量上限値は他の実験結果を圧倒して世界一厳しい値をつけた。このことから素粒子物理起源説など、天体起源ではない極高エネルギー宇宙線生成の可能性は否定され、天体物理的な機構に基づく放射であることがほぼ確実となった。この結果は2011年初頭に予定されているIceCube実験完成後のフルオペレーションによる極高エネルギーニュートリノ検出能力を実証したものとも言える。 またニュートリノ検出における系統誤差の大きな要因となっていた、氷河の光学的性質の不定性を押さえるために、特別に開発した耐圧光源装置を南極現地に埋設した。この装置は高圧タンク内に設置した青色LED及びビーム収束系、そしてフォトダイオードからなり、信号を遠隔操作で1.5km上層の氷河表層から読み出すものである。これにより、氷河深層部における散乱長がこれまで仮定した値より大幅に長いことがわかり、氷河光学模型の改善を実施した。
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